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提供日:2008年1月30日

部局名:琵琶湖環境部

所属名:滋賀県立琵琶湖博物館

担当者:高橋啓一

電話:077-568-4811、4812

メール:press@lbm.go.jp.

30年前に見つかったナウマンゾウ化石の中からマンモスゾウの歯を発見

北海道中川郡幕別町忠類から1969年に発見され、翌年に渡って発掘されたナウマンゾウ化石(忠類標本)を再検討したところ、第2大臼歯とされていたものが第3大臼歯であり、かつ未咬耗の第3大臼歯とされていたものがマンモスゾウの第2あるいは第3大臼歯であることが明らかとなった。このナウマンゾウの全身骨格はレプリカとして国内外22ヶ所の博物館等に展示されているが、今回の調査結果によって、25〜30歳とされていたこの標本の年齢表示を変更することが必要となると同時に、気候変化に応じた温帯性のナウマンゾウと寒帯性のマンモスゾウの入れ替わりの議論に新たな資料が追加されることとなった。

内容

北海道中川郡幕別町忠類から1969年に発見され、翌年に渡って発掘されたナウマンゾウ化石(忠類標本)は、日本で数少ないナウマンゾウの全身骨格として、そのレプリカは国内外の博物館などで主要な展示物のひとつとなっている。

発見された化石の中には、5個の臼歯化石が含まれており、それらは同一個体のナウマンゾウのもので、4個は上下左右の第2大臼歯、残るひとつは未咬耗の「右上顎第3大臼歯?」とされてきた。琵琶湖博物館の高橋啓一総括学芸員(研究部長)、京都大学大学院生の北川博道、北海道開拓記念館の添田雄二学芸員らは、これらの臼歯の歯冠幅(歯のはば)、エナメル質の厚さ、咬板頻度(臼歯を構成するエナメル質の板が10cmに何枚あるか)などの計測値や臼歯咬合面(きゅうしこうごうめん;かみあわせの面)の形態を再検討した結果、4個の第2大臼歯とされてきた標本は、ナウマンゾウの第3大臼歯であることに気づいた。忠類標本が第3大臼歯を使っている十分に成熟したゾウであることは、体の骨の端にみられる化骨状態からも確認された。このことによって、従来「第3大臼歯」と同定されていた5個目の標本が、全身骨格が産出しているナウマンゾウと本当に同一個体なのかが問題となった。

そもそも第3大臼歯とされていた標本は、1970年の発掘の直前に、準備をしていた先発隊の一員である山口昇一氏によって土捨場付近の表土から発見された。その時点では、発掘の事前準備として側溝(排水溝)のみを掘っていたことから、ナウマンゾウと同層準でややはなれた側溝からこの臼歯が産出し、誤って土捨場に捨てられたものと判断されてきた。仮にこの臼歯が側溝から産出したものとしても、一箇所に固まって産出した他の歯や骨化石とは産状的にも同一個体かどうかは疑わしいことになる。

この臼歯は、エナメル質の厚さが2〜2.2mmと薄く、咬板頻度は7〜8(咬板間は乾燥し割れてやや広がっていることから実際はもう少し大きい値)と高い。これらの計測値と形態の観察から、高橋らはこの標本をマンモスゾウMammuthus primigeniusの左下顎第2あるいは第3大臼歯と同定した。

ゾウ類の臼歯は顎の奥から水平に前に押し出されるようにして生えかわる特殊な交換(水平交換)によって1本ずつ生えかわる。第2大臼歯は20〜40歳の間、第3大臼歯は30〜60歳くらいまで使用する。

今回の調査結果によって、これまで各地の博物館で25〜30歳くらいと表示されていた忠類産のナウマンゾウの年齢は、50歳以上と変更されなくてはならない。また、時代的にはマンモスゾウの方が新しい時代の地層に埋まっていたと考えられるが、同じ場所からナウマンゾウとマンモスゾウの化石が発見されるという珍しいことが起ったことになり、北海道における気候変化に応じたナウマンゾウとマンモスゾウの入れ替わりの議論に新たな資料が追加されることとなった。

この成果は、2月1日から3日の間、宇都宮大学で開催される日本古生物学会で発表される予定である。

この内容は1月11日付け北海道新聞(朝刊)および十勝毎日新聞(朝刊)で報道されました。

マンモスゾウの臼歯

マンモスゾウの臼歯とわかった標本(側面)

 

ナウマンゾウ骨格標本

ナウマンゾウ忠類標本の組立て骨格(北海道開拓記念館)


参考

ナウマンゾウNaumann's elephant Palaeoloxodon naumanni

長鼻目ゾウ科パレオロクソドン属の1種。更新世中〜後期(約35万年〜2万年前)に生息。北海道から沖縄まで約200ヶ所からの報告がある。肩高は、2〜2.7m程度。完模式標本は静岡県浜松市産の標本で、ナルバダゾウの亜種として記載された(Makiyama、 1924)。その後、多くの近似種や亜種が記載されたが、1970年代になってようやくナウマンゾウは独立の種として扱かわれるようになった(Hasegawa、 1972)。属名についてはElephasLoxodontaが使われることもあったが、頭骨の研究からPalaeoloxodonを使用することが提唱された(犬塚則久、1977)。また、多くの近似種や亜種が再検討され、それらはナウマンゾウの異名とされるようになった(高橋、1991)。

マンモスゾウmammothMammuthus primigenius

長鼻目ゾウ科マムサス属の1種。ケナガマンモス、ケマンモスとも呼ばれる。マムサス属には他に、M. subplanifronsM. rumanusM. meridionalisM. trogontheriiM. columbiなどが知られている。これらは広義の意味でマンモス類と呼ばれる。約40万年前にはすでにマンモスゾウの化石が北東シベリアから発見されている。ヨーロッパに出現するのは約15万年前。約10万年以降にヨーロッパからシベリア東部にまで広がっていた草原(マンモスステップ)にトナカイ、ジャコウジカ、ヤギュウ、ウマ、バイソンなどとともに生息していた。肩高2.7〜3.4m、耳は小さく、大きく湾曲した牙を持つ。体毛は、10〜90cmの外毛と2.5〜8cmの密生する内毛からなっていた。日本では、北海道と島根沖の日本海から臼歯化石が発見されている。

 

ゾウの臼歯

 

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