森林・林業なるほど情報!!『カシノナガキクイムシのお話』
わぁ〜い!! 8月なのにもう紅葉してるよ
うぉーたん、紅葉はまだ早いぞ。あれは「ナラ枯れ」で枯れた木の葉が変色しているんだ。 カシノナガキクイムシという昆虫によって木が枯れているよ。 滋賀県ではミズナラやコナラという木が枯れていて、森林の木がどんどん枯れているよ。
「キクイムシ」というぐらいだから、この昆虫がボリボリと木を食べてしまうのかな〜? どんなふうに木は枯れていくの?
昆虫のメスと早くに生まれた幼虫はカビの一種の菌を木の孔の中に持ち込んで菌を育てるん だ。不思議なことにキクイムシ類のメスの多くはこの菌がないと産卵することができないん だよ。生まれてきた幼虫は菌を食べて成長し、成虫となって飛べるようになると菌を体内に 取り込んで別の木まで運んでいくんだ。実はこの菌が原因で木が枯れることがわかっているん だ。また、枯れた木の下には、フラスと呼ばれる粉が落ちているから今度見に行くといいよ。
昆虫と菌がお互いに助け合って生きているんだね。 でも、どうしてナラ枯れの被害が増えてきたんだろう。
その原因はまだはっきりとは分かっていないんだ。いくつかの原因が考えられるけど、森林 の木が年をとりすぎて被害が増えていると考える専門家がいるよ。昭和30年頃までは薪や 炭を採取するため頻繁に木を伐っていたので森林の中には若い木が多かったんだ。でもその 後の燃料革命で薪や炭が使われなくなり、木を伐らなくなったため、年老いた木が多くなっ てきたんだ。そして実際に年老いた大きな木が被害にあっていることが多いんだよ。ナラ枯 れの問題は、人々と森林とのつきあい方の問題でもあるということなんだ。 また、 地球温暖化の影響についても研究が進められているよ。
でも、なぜ木が枯れると困ったことになるの?
枯れて真っ赤になっている山を見ていると悲しくなるよね。このように、景観の悪化が人々の 心に与える悪い影響は無視できないよ。また、日本に生息しているチョウ類の10%以上の種 は、ナラ枯れの被害を受けるミズナラ、コナラ、クヌギ、アベマキ、ナラガシワ、カシワなど の木の葉を食べているんだよ。このように、ナラ枯れで木が枯れることは、人間だけではなく、チョウ類の中心とする昆虫の仲間にとっても困ったことなんだ。 だから、ナラ枯れを防がないといけないんだけど、ナラ枯れから森を守るための有効な方法は 残念ながらまだ見つかっていないんだ。一刻も早く防除する方法を考え出してほしいと思うけ ど、それよりも、木材や燃料、美しい景観などを提供し、多様な動植物の生息の場でもある森 林の大切さやありがたさをみんなに知ってもらいたいんだ。ぜひ、僕らの森に遊びにきてね。
※参考文献 小林正秀・上田明良(2005):カシノナガキクイムシとその共生菌が関与するブナ科樹木の萎凋枯死−被害発生要因の 解明を目指して−日林誌87(5) 芦生の森と‘ナラ枯れ’報告書(2004年):京都大学フィールド科学教育研究センター 寺本憲之(1993):日本産鱗翅目害虫食樹目録.滋賀県農業試験場研究報告別号1 森林昆虫(1994):P32〜P34.養賢堂
「ナラ枯れ」により景観が悪化している。国内で最も古い被害記録は昭和9年の南九州のシイ・カシ類の被害で、滋賀県では昭和50年頃に初めて被害が確認され、現在湖西地域だけでなく湖北、湖東地域でも被害が見られる。 被害の問題点としては、建築材・シイタケ原木などの資源が失われることや景観の悪化、水源かん養機能の低下、どんぐりを餌とするツキノワグマに与える影響などが指摘されている。
カシノナガキクイムシは本州、四国、九州、沖縄に分布している。成虫の体長は4〜5mm程度でメスの体には菌を取り込むポケットのような器官(マイカンギア)がある。一夫一妻性で親が子どもの世話をする家族生活を営んでいる。繁殖期を迎えたオスは幹に深さ数cmの孔を掘り、フェロモンを放出してメスを寄ぶ。メスがやって来るとオスはいったん外に出て交尾し、その後メスが保持するアンブロシア菌とともにペアは孔の中に戻り菌を培養する。この菌は子どもの餌であり、また木が枯れる原因でもある。
ナラ類を枯死させる菌として、Raffaelea quercivora が知られている。カシノナガキクイムシが属するナガキクイムシ科のほとんどの種はアンブロシア菌と総称される共生菌を培養して摂食しているが、R.quercivora もアンブロシア菌の1種である。この菌が繁殖することで、辺材部で通水機能が低下し、樹木が枯死する。
枯死した木の根元には多量の粉が積もっている。これは木屑と糞の混合物でフラスと呼ばれる。フラスは成虫が幹に孔を掘って進入するときに排出されるもので、仲間を誘引する効果があることが知られている。